- 年金だけでは生活費が足りない
- 入院が決まり急な出費がある
こういった場合に毎月利子のみの支払いで借り入れができる、リバースモーゲージの制度をご存じでしょうか。
リバースモーゲージは、高齢者でも自宅を担保にお金を借りられる制度です。
リバースモーゲージのメリット、デメリットを徹底的に解説していきます。
この記事でわかること
- リバースモーゲージは最終的に自宅の売却を条件に毎月の返済が少額になる借り入れ制度
- 住宅ローンとリバースモーゲージの違いは借金が増えるか減るか
- リースバックとリバースモーゲージの違いは担保にするか売却するか
- ノンリコース型とリコース型は相続人が残った債務を返済するか、しないか
- リバースモーゲージのメリットは高齢者の借り入れ向きな制度
- リバースモーゲージのデメリットは6つあり、すべて理解する必要がある
リバースモーゲージは最終的に自宅の売却を条件に毎月の返済が少額になる借り入れ制度
リバースモーゲージとは、自宅を担保に借り入れができる融資制度の1つのことです。
自宅を担保に借り入れしたあとも、持ち家に継続して住めるのが特徴です。
しかし契約者が死亡したときに、担保となる自宅を売却するか、もしくは現金で一括払いをして借金を返済しなければなりません。
リバースモーゲージは、他の借り入れ方法と比べても利子のみの返済となるため、毎月の返済額が低い特徴があります。
高齢者でも利用可能
リバースモーゲージは、最終的に借入人が死亡したときに担保となる自宅は売却する必要があります。
そのため、年齢が若いと返済に長い期間を要してしまい、制度が成り立たなくなってしまうこともあるなど、高齢者向けの制度となっています。
年齢制限は各金融機関によって異なり、一般的に55歳以上〜80歳未満の人が利用対象です。
夫が死亡したあとも妻は自宅に住み続けられる
夫が契約者であり妻が同居している場合、妻を連帯債務者とすると、夫が死亡したあと妻が死亡するまで契約が継続します。
そのため、妻は死亡するまで利子を払いながら自宅に住み続けられます。
なお、妻が連帯債務者でなく金融機関の承諾を得ている場合、最長3年間自宅に住み続けられます。
ただし、金融機関によっては認められない場合もあります。
契約に推定相続人の同意が必要になる
リバースモーゲージは、カードローン等の借り入れ方法とは異なり、契約時の推定相続人の同意が必要です。
金融機関によっては、相続人全員の同意が必要となるケースも多くあります。
逆に消費者金融や銀行の取り扱うカードローンは、相続人の同意も必要もなく、担保も必要ではない代わりに金利が高いというデメリットがあります。
すぐにでも5万円から10万円の借入が必要な方はリバースモーゲージよりもカードローンおすすめです。
最終的に自宅の売却が前提となるため、自宅が相続財産として残りません。
そのため、家族でよく相談し、十分な理解を得たうえで契約する必要があるでしょう。
本来、リバースモーゲージを利用しなければ自宅は相続財産となりますが、リバースモーゲージの利用によって相続財産にならないため、相続税の節税になります。
他にも、限度額まで借り入れしてしまうと、融資は途中で打ち切られてしまいます。
場合によっては一括返済を迫られる可能性もあり、それが払えなければ、借入人が死亡していなくても自宅を手放さなければいけません。
借入金の使い道が決められている場合がある
リバースモーゲージを取り扱う金融機関によって異なりますが、借入金の使い道が決められている場合と、使い道が自由な場合があります。
制限があるケースでは、主に以下が挙げられます。
- 介護、医療費資金
- 生活資金
- 住宅資金
具体的には自宅のリフォーム資金や将来の老人ホーム入居資金、その他生活に関連する利用目的であれば、ほとんどが問題なく借入金を使えます。
借入金の使い道が自由な金融機関でも、事業資金に使用できないケースは多くあるため、ご自身の使用目的に合った金融機関を選択しましょう。
リバースモーゲージと住宅ローンとの違いは、借金が増えるか減るか
住宅ローンとリバースモーゲージは、自宅を抵当に入れて融資を受ける流れまでは一緒です。
住宅ローンは、はじめにまとまったお金を借り入れ、毎月返済をしていくローンです。
返済額の内訳は元本と利子となり、返済終了まで両方払い続けます。
対してリバースモーゲージは、定期的または一括でお金を借り入れ、毎月の返済は借入金にかかる利子のみとなります。
元本の返済は、契約者が死亡したときや契約期間が終了したとき、一括返済をしたときです。
リバースモーゲージとリースバックとの違いは、担保にするか売却するか
リバースモーゲージとリースバックは似たようなものだと思う人も少なくありません。
しかし、リバースモーゲージとリースバックは異なる点が多いため、比較検討する必要があります。
以下が比較表となります。
リースバック | リバースモーゲージ | |
---|---|---|
住み続ける | ◯ | ◯ |
お金の受け取り方 | 一括 | 一括、随時、定期 |
支払い、返済 | 家賃を毎月支払う | 利息のみ |
対象物件 | 問わない | 原則戸建てのみ |
年齢制限 | なし | あり |
資金使途 | 自由 | 制限がある場合が多い |
家の所有権 | 将来的に買い戻しが可能 | 死亡、契約満了時に家を売却 |
家族の同居 | ◯ | 配偶者以外不可 |
リースバックとは、自宅を売却したお金を一括で受け取り、賃貸として家賃を払いながら自宅に住み続けられることです。
リースバックの特徴は以下が挙げられます。
- 将来的に自宅を買い戻しが可能
- 年齢制限無し
- 年収基準無し
- 所有者ではなく使用者になるため、固定資産税がかからない
- 売却したお金で住宅ローンやその他のローンを返済できる
住宅ローン返済中にリースバックを利用した場合、家賃が月々のローン返済額より上回ってしまう可能性もあります。
リースバックを利用したときは、家賃と住宅ローンの返済額の差をよく確認する必要があります。
対してリバースモーゲージは、自宅を売却せずに自宅に住み続けられるため、借りた分の利子のみの支払いとなります。
所有者の変更もないため、死亡するまではご自身の持ち物です。
リ・バース60とは住宅金融支援機構のこと
リバース60とは、住宅金融支援機構と提携している金融機関が、満60歳未満の利用対象に提供している住宅ローンのことです。
リバースモーゲージの取り扱いをしている金融機関は多く、提携している場合には商品名にリバース60の言葉が使用されていたり、リバース60をもとにしていますと記載されていたりします。
以下、リバース60の特徴となります。
- 60歳以上(50歳以上59歳以下の人も利用可能ですが、担保掛目60歳以上が55%~65%のところ、50歳以上59歳以下の人は30%)
- 年金のみの収入でも借入が可能
- 元金返済は死亡したときに一括返済
- 住宅の建設、購入、リフォーム、借り換え
リバース60と提携していない金融機関は、金融機関独自の商品となるため、契約期間や年齢制限等はよく確認する必要があります。
リバースモーゲージにはノンリコース型とリコース型がある
リバースモーゲージで借り入れをした元本は、契約者が死亡したあとに自宅の売却によって完済できます。
しかし不動産価値の見直しなどで、自宅を売却したとしても借入金を返済できないケースも起こりえます。
このとき、相続人が残った債務を返済する必要があるのがリコース型、返済する必要がないのがノンリコース型となります。
リバースモーゲージを利用するにあたって、ノンリコース型かリコース型、どちらか一方のみ選びます。
リコース型のみを取り扱う金融機関もあるため、選ぶときに違いをよく理解しましょう。
ノンリコース型は相続人が残った借金を返済する必要がない
契約者はご自身が死亡したあとに借金が残り、相続人に迷惑をかけてしまわないかと、心配になってしまう人も多くいるのではないでしょうか。
他にも契約者は借入金が増えるたびに、将来自宅を売却したときに元本を完済できるのか不安になる場合もあります。
ノンリコース型の特徴は、相続人が残った借金を返済する義務がない点です。
相続人は契約者が死亡後に自宅の売却をすると、相続人の責任が完了します。
ノンリコース型であれば、将来相続人を困らせずに、ご自身の不安も軽減されます。
リコース型は相続人が残った借金を返済する必要がある
ノンリコース型に対して、リコース型は相続人が残った債務を返済しなければいけません。
借金が残ってしまうと聞くと、良いイメージを受けない人もいると思いますが、メリットもあります。
リコース型は借主の責任が限定されていないため、ノンリコース型に比べて金利が低い傾向があります。
金融機関によっても異なりますが、月々の返済額にも差が表れます。
さらに、ノンリコース型に比べてリコース型は融資限度額が高くなる傾向もメリットの一つです。
ノンリコース型は担保割れを防ぐために、あらかじめ融資限度額が低めに設定されています。
リコース型の方が融資限度額が高く、多くの融資を受けたい人はリコース型を検討するとよいでしょう。
リ・バース60を利用する99%がノンリコース型
上記で解説したノンリコース型とリコース型はどちらもメリット、デメリットがあります。
リ・バース60では、実際にはリバースモーゲージを利用している99%の人がノンリコース型を選んでいます。
これだけリコース型とノンリコース型に差が出ている背景には、やはり相続人に負担をかけたくないと思う人が多いことがわかります。
借り入れ希望額や家族の意見、不安な点などをふまえ、ご自身に合ったプランを選ぶと良いでしょう。
リ・バース60を取り扱っていない金融機関では独自の条件があり、ノンリコース型がないケースもあります。
リバースモーゲージのメリットは自宅に住みながら自宅を担保に設定できる
リバースモーゲージの最大のメリットは、売却せずに住みながら自宅を担保に設定し、融資を受けられる点です。
他にもメリットがあるため、解説していきます。
リバースモーゲージの返済は利子のみでよい
一般的なローンでは、元本と利子の両方を返済していく必要がありますが、リバースモーゲージは毎月利子のみの返済となります。
他にも金融機関によっては、毎月の利子さえ元本に組み込むタイプも存在します。
この場合、利子は借り入れ残高に組み入れられるため、利子も支払う必要はありません。
リバースモーゲージは高齢者の借り入れ向きな制度
リバースモーゲージの契約年齢は、55歳〜80歳未満なため、高齢者向けといえます。
さらに、年金のみの収入でも借入が可能です。
最終的に自宅を売却する点も、自身の将来とともに自宅の将来も考えはじめる高齢者向けの制度といえるでしょう。
リバースモーゲージのデメリットには6つのリスクが存在する
リバースモーゲージには、デメリットも多く存在します。
契約するときは確認しておく必要があるため、詳しく解説していきます。
借入金の受け取り方で毎月支払う利子が変わる
借入金の受け取り方は3種類あります。
- 一括支給
- 随時支給(必要なときに支給)
- 定期支給
リバースモーゲージでは借入金の受け取り方で利子が変わります。
利子は実際に借りた部分を元本として計算するため、一括支給よりも、年金のように少額ずつ借り入れをした方が利子の金額を抑えられるでしょう。
具体的な例を挙げてみましょう。
以下の条件で例を挙げてみたいと思います。
(例)
- 限度額1000万円
- 年間50万円ずつ借り入れ(初年度の利子額は15,000円)
- 70歳~90歳の20年間
- 利率3%(一般的な利率は2.5%~5%)
上記の条件で年金のように少額ずつ借り入れていった場合、毎年利子額が増えていきます。
1年目では年間15,000円だった利息額も、5年後には75,000円になります。
もちろん、少額ずつ借り入れていく方法が利子の額が抑えられますが、毎年払う利息が増える点は知っておく必要があるでしょう。
他にも20年間で払う利子額合計を見ると総額346万5000円のため、上記の条件である限度額1000万円の場合、実際に使える金額は653万5000円となります。
金利が上がると更に使える金額は減ります。
このように、限度額と払う利子額の総額も確認しておく必要があります。
元本に利子が組み込まれているプランもあるため、プランによってはこの限りではありません。
長生きするほど払う利子が増える
長生きは、本来とても嬉しいことですが、リバースモーゲージではリスクとなります。
一般的なローンでは、長生きをすると払うお金が減っていくものです。
リバースモーゲージは、長生きするほど払うお金が増えていきます。
死亡したときに元本を返済するリバースモーゲージですが、反対に死亡するまで利息は払い続けなければいけません。
他にも契約期間が決まっている場合、契約期間が終了すると生きている間に、自宅を手放さなければいけない状況になる可能性もあります。
さらに、長生きをして限度額いっぱいまで借りてしまった場合、融資は途中で打ち切られてしまいます。
この場合には一括返済を迫られる可能性もあり、払えなければ死亡していなくても、自宅を手放さなければいけなくなるケースもあるでしょう。
金利変動のリスクで返済額が増える場合がある
リバースモーゲージの金利は、金融機関や物件の評価額によって異なり、取り扱っている金融機関の多くが変動金利です。
そのため、契約期間中に金利が上昇すると、毎月の返済額が増えてしまうリスクがあります。
他にも、住宅ローンで加入する団体信用生命保険は、リバースモーゲージでは利用対象外です。
契約者が亡くなった場合や、高度障害状態となって返済が難しくなったとしても、支払い義務はなくなりません。
不動産担保の価値が見直され、極度額が足りなくなる可能性もありえる
リバースモーゲージの借入額は、契約時の担保評価額に応じて決まり、契約後は一定期間ごとに不動産担保の価値が見直されます。
不動産評価額が下落した場合には限度額が下がってしまうリスクや、融資がストップしてしまう可能性もありえるため、リスクがご自身の許容範囲なのかを事前に確認しましょう。
担保評価では、不動産価値が大幅に下落すると担保割れの恐れがあるため、土地が重視されています。
限度額が下げられ、借入残高が足りなくなってしまった場合には、一括返済や足りない分を追加で返済しなければならないケースもあります。
ただ、限度額は不動産価値の50%と低めに設定されています。
そのため、ほとんどは不動産価値が下落しても、不動産を売却すると借金が残る事態にはなりません。
リスクの1つとして頭には入れておくと良いでしょう。
契約期間が決まっている場合もある
期間が終身になっている場合、契約者が死亡するまで利子のみの支払いで借り入れができますが、中には契約期間を定めている金融機関もあります。
契約期間が終了したら元本の支払いをしていかなくてはいけないため、終身までの契約期間が望ましいといえるでしょう。
終身と謳っている金融機関でも、数年ごとの自動更新が必要な場合もあり、万が一契約を終了させられてしまう可能性も考えられます。
終身までの自動更新がある場合は、契約が変わる条件について、納得いくまで検討する必要があるといえます。
マンションは対象外になることが多い
リバースモーゲージを取り扱う金融機関によっては、リバースモーゲージの対象物件を一戸建てに限定し、マンションは対象外となる場合があります。
リバースモーゲージでマンションが対象外になる場合の理由は、以下となります。
- 担保となる物件の評価額は土地の価値を中心に算出されるため
- マンションは土地を個人で所有しておらず、居住者で共有しているため、金融機関が不動産を自由に活用できない
リバースモーゲージではマンションが対象外になることが多いのですが、対象となる場合もあります。
- 築年数が浅い
- 駅から近い
- 人口が多い大首都圏などにある
上記は対象となる可能性があるマンションの主な特徴です。
築年数は20年以内の物件でないと難しいとされていますが、人が集まる人気の物件は有利といえるでしょう。
リバースモーゲージが向いている人は、将来自宅を残さないと考えている人
リバースモーゲージでの借り入れが向いている人は、将来自宅を残さなくても良いと考えている人です。
今の生活スタイルや、将来の生活を考えながら家族と相談しましょう。
子どもに家を残す必要がない人
- 子どもは自分たちで家を買ってしまった
- 相続人がいない
上記のようにご自身が死亡したあと、家だけが残ってしまうと悩んでいる人は、リバースモーゲージの利用に向いているといえます。
リバースモーゲージを利用すると死後の不安や心配からも解放され、かつ自宅の売却金を元本に生きているあいだに利用ができるため、老後を豊かに過ごせるのではないでしょうか。
いずれは老人ホームに入居したいと考えている人
老人ホームへの入居には高額な費用がかかります。
リバースモーゲージを利用すると、今まで貯めてきた貯金を全額支払いにあてずに、高額な入居費用を準備できる可能性があります。
住宅ローン返済の負担が大きい人
住宅ローンの返済が終わっていない場合、現役で働いていたときと同じようにローンを返していくのが、定年を過ぎてからでは負担になってしまいます。
リバースモーゲージを利用すると、借り換えが可能です。
借り換えすると、毎月の支払いは利子のみとなるため、負担が軽減します。
借り換えする場合は、現在支払っている住宅ローンと借り換え後の金額をよく比較してから行いましょう。
ご自身の死後に自宅を処分するのは遺された人たちであり、不安や心配をかけたくない人も多くいるのではないでしょうか。
リバースモーゲージを利用すると、将来の不安が軽減し、安心して老後を過ごせる制度です。
一方でリスクもあるため、リバースモーゲージの制度を十分に理解して利用しましょう。
まずはぜひ、ご家族でじっくり家について話し合ってみてください。